この前書いた記事に、「時間軸を追加してみたい」的なコメントがあったのですが、面白そうなので考えてみました。
前
- フリーランスのキャリアは獣道
- 単価を指標にする理由
- 3つのキャリアパスと、スタート地点を考える
- どういうパスが考えられるか?
- 共通した攻略法:壁を発見するまで進む
- 共通した難しい点:フリーランスで積みづらい経験の問題
- そもそもそこまで頑張るべきか?問題
- 時短にする人は何をしているんだろう?
- フリーランス以外になるルート
- その人がどの道を往く人か分かると、理解しやすい
- お前はどうなの?
- さいごに
フリーランスのキャリアは獣道
特に日本において、キャリアパスというのは会社が用意してくれることが多いと思います。IT業界のSIerなんかでよく見かけるのは、「管理職コース」「PMコース」「スペシャリストコース」の3択です。昔はスペシャリストコースが無くて、出世するなら技術を捨てなければいけない風潮がありましたね。
対してWeb系の会社では、そもそもキャリアパスが存在していないケースを多く見ます(観測範囲の問題かもしれません)。そもそも会社が小さいとか、そもそも会社が若すぎて10年スパンの話ができないとか。
じゃあフリーランスエンジニアはどうかと言うと、もちろんありません。ロールモデルも参考になりそうなのがあまりないので、「フリーランスになってみたけど、これからどうしよう」と言ってる人を大量に見かけます。それも結構優秀な方で。
キャリアパスを自分で描かなければならないんですが、そんなこと言われてもナーという感じがしますね。
私もその一人だったのですが、界隈を観察していくと、個人の主義主張や相場・社会の仕組みなどから偏りが生まれ、いくつかのルートが形成されているなーというのが薄っすら見えてきました。
言わば獣道ですね。
もちろん獣道なんて無視して突き進むことも出来ますが、獣道を把握しておくだけで少し安心感が生まれるのではないでしょうか。
単価を指標にする理由
普通のキャリアパスだと、きちんと名前がついています。管理職名だったり、スペシャリストの名前だったり。
フリーランスエンジニアにおいても何か良い感じの評価軸があればいいですが、フリーなだけあって様々な価値観があり単純な評価軸は作りづらいと思います。
なので最も分かりやすい単価(サブで稼働時間)を軸にせざるを得ないです。
一応、社会的な評価がダイレクトに反映されるものなので、当たらずとも遠からずですよね。(もちろん、需要や景気など様々な要因で変動するし、単価だけが価値ではないので非常に注意が必要です。あくまで参考程度。まあ会社の評価も当てにならないので似たようなもんです)
3つのキャリアパスと、スタート地点を考える
前回、フリーランスエンジニアの生き方について、3つのルートを考えてみたのですが。
- 技術力を極めスポットコンサルとして生きる(知名度・人脈が必要)
- 生産力を極め、総合的な製造者として生きる
- ワークライフバランスを極め、自由に生きる
これらはあくまでベクトルであって目標です。「現時点」を語るには足りないので、大多数が属しているであろう「常時1案件程度、ごりごりタスクをこなす普通の仕事を、月160時間前後で働く」をスタート地点として0番目と置いてみます。
すると、誤差はあるでしょうけど、大体の界隈で以下のような状態になっていると思います。
(また図がガチャガチャしている・・・)
黄色が0番目、 赤が1、青が2で、緑が3です。
2の捉え方について、ちょっと悩ましいですね。時間を固定にしつつ複数案件で働いている方もいるので。
また、リモート請負が基本の界隈について疎いので、その点すいませんがかなり外していると思います。
どういうパスが考えられるか?
ざっと考えてみました。
ワークライフバランスルート(0→3)
説明:十分単価が上がったら労働時間を減らす
攻略法:得意領域で正攻法
難易度:週4くらいなら割といける?
メリット:自由
難しい点:案件数少ない、信用の問題、単価が落ちる
派生パターン:リモートなど、柔軟な働き方
ポイント:余った時間で何をするか(後述)
複数案件ルート(0→2)
説明:1案件が安定してきたら仕事を増やす
攻略法:時短案件を複数受ける
難易度:難しい
メリット:儲かる。経験値を安定させられる。一個ダメになっても余裕なので強気になれる。
難しい点:体力勝負。時間足りない。時短にすると単価落ちる傾向。リモート可能案件少ない。炎上回避必須。
派生パターン:パッケージ化(※より高難度)
ポイント:どういう組み合わせの仕事を受けるか、仕事をどう見つけるか
※最近私はここにトライしています
参考:
ITエンジニアが副業探してみた 2019 - IT業界で気づいたことをこっそり書くブログ
コンサルルート(?→1)
説明:界隈の著名人のような働き方
攻略法:わかりません
難易度:超難しい
メリット:わかりません
難しい点:コンサル案件をコンスタントに受ける必要がある。地頭・ポテンシャルの高さ。知名度。働き方。コミュニケーションと技術力、両方必要。コンサルの悩み全般。
派生パターン:色々。ビジネス系。御用聞き系。インフルエンサー。
ポイント:狙ってできる物なのか不明ですが、目標にするのは悪くないかもしれません。◯◯さんみたいになりたい、みたいな。
コンサルルート2(?→3→1)
説明:1を狙うために、一旦時短で稼働する
以下、コンサルルートと同じ
(正直、0からダイレクトに1に行く感じがしないんですよね。こっちか、あるいは2を経由するほうが多いのでは?)
1案件集中ルート(→0)
説明:そもそも1案件に集中したいし、週40時間労働も苦ではない。まるで社員と同じように働くけど、様々な理由でフリーランスを選択している状態。あるいはジョブホッパー状態。
攻略法:正社員と同じ。もしくは良い会社を見つけるためアンテナを張る
難易度:易しいけど、どこかで悩みに当たることもある
メリット:社員とフリーのいいとこ取り?(儲かる、責任の範囲が明確、辞めても経歴が傷つかないので柔軟に動きやすいなど)。また、案件数が多く非常に安定します。
難しい点:社員と温度差や疎外感を感じることがある。単価の頭打ち。自分の中でどう折り合いをつけるか
ポイント:優秀な方は早々に限界ラインに到達するので、次にどうするか悩んでしまうかもしれません。割り切りや、行動ルールが必要になりそうです
共通した攻略法:壁を発見するまで進む
どのように進むかはもちろん自由なのですが、獣道の手前には壁があると思います。
眼の前に壁があるからルートを変えようと思うし(pivot)、壁がなければそのまま進むでしょうし。
なので、図でいうところの「80万円(週40h x 5000円)」のような壁を発見するとスムーズなのではないかと思います。
ちなみに図では「80万円」あたりを壁にしているのですが、これは界隈・相場・景気で変動すると思います。例えば難しい技術だとしても、人材の供給過多なら相場は自ずと下がりますし、バブル状態の界隈は相場が高いです。
このライン、私は歴5〜15年くらい同じ領域でやってきてるそれなりのベテランが1社からもらえるちょっと高めの額、という感じで置いています。
最近のWeb・アプリ系業界はそういう単価が簡単に検索できるので、調べてみると何となくラインはなんとなく分かると思います。自分の得意領域と似た領域(例えば別言語、別フレームワーク)はどうかとか見ると、世間の需要供給バランスが透けて見えて面白いです。
ただ、最近の常駐系エンジニアの大きな壁が大体80万円あたりになっているのは似たり寄ったりだと思います。これは消費税の壁(売上1000万円の壁)でもあるんですよね。
売上高が1,000万円を超える場合(消費税について)|国税庁
消費税の納税を免除される「免税事業者」とは?|経理・財務|経営ハッカー
よっぽど優秀な人でもこの壁の手前で「この壁超えるのやだー」となってるので、何かそうなっちゃってるようです。1000万稼いだ上で「よーしもっと頑張って2000万にするぞー」みたいな人は少ないですよね。(皆もっと積極的に超えて欲しい)
しかもこの壁を超えると、競合が受託企業になってきます。個人で立ち向かうのは中々しんどいです。
共通した難しい点:フリーランスで積みづらい経験の問題
どのルートに行ってもこれはついて回ります。
あくまで外注なので、山を登ろうとしたときに何かスキルセット(例えばリーダー経験、要件定義経験)が足りないということが問題になりがちです。
(これはより深く難しい話になりそうなのでいつか考えてみたい)
そもそもそこまで頑張るべきか?問題
それなりのベテランでも超えない壁(むしろ山?)なので、そもそも0地点の上の方で満足する方の方が圧倒的に多いです。
その場合はまた、価値観をガラッと変えて別のパスを考えてみるのも良いかもしれませんね。せっかくフリーなんだし。
もちろん「もう十分だからパスなんて要らねぇ!!」というのも有りだと思うんですが、ふわっとやるには人生長過ぎると個人的には思います。何か、落ち着かない感じ(ふわっとした感想)
時短にする人は何をしているんだろう?
3のワークライフバランスのコースを選択している人が、何をしているか聞いてみると自分なりのパスの参考にできるかもしれません。
- 家族のための時間に使う
- 遊ぶ(ゲーム!)
- 新しい技術、好きな技術を試す
- 啓蒙・布教・エバンジェリスト
- OSSに対する貢献
- 人脈を広げる
- 情報発信する
- 自分のプロダクトを持つ
- 起業の準備をする
- 学校に行く
- 別領域に手を出す(デザイン、営業とか)
- ミートアップ、会社訪問
- ハッカソン
- プログラミング教室で教える
- Q&Aサイトで教えまくる
- 旅行
- スポーツ
- 音楽
- 創作や芸術
- ボランティア
- 死ぬほど寝る
これは冗談ではなく、ITって基本的に世の中の何かを解決するためのことが多いので、何かしら興味をもつのは強みだと思います。
遊びだってそうです。今や遊び領域は1つの大きな市場ですからね。
フリーランス以外になるルート
フリーランスは腰掛けだ!という人も結構居ます。
そもそもフリーランスになる方は、様々なキャリアパスを積極的に想定してる方が多いので、「たまたま道すがらにフリーランスエンジニアが存在した」というようなケースもありますよね。
- 社員に戻る(フリーで潜り込んで良い会社を探す)
- 起業する(フリーとして働きながら準備する)
- エンジニア以外になる(あるいは混合した何か)
などなど。
こうなったらまたゲームチェンジです。
限界が来たらゲームを変えてみるのも良さそうですね。
(パターンを全て挙げようとすると非常に長くなりそうなので割愛)
私の周りの噂では、社員に戻る人結構多いみたいです。色々考えた末に。
その人がどの道を往く人か分かると、理解しやすい
これはおまけですが、その人がどの獣道を通ってるのかや目的地が分かると、その人の考え方とか言動について理解しやすいと思います。
というか、理解しないと話が通じなさ過ぎてツライです。
特に情報発信されてる方がどの道を往く人なのか分からないと、自分にとっては不正解な情報をインプットしてしまうかもしれません。そのためにも、できるだけ多くのパターンを覚えておいて、自分はどうかというのも把握しておきたいです。
お前はどうなの?
ちなみに私はとりあえず当分2ですが、サービス持ちたい派です。
ただその難しさも重々承知しています。
フリーランスエンジニアは、優秀な人達が苦戦してるの見ることが多いと思うので、結構慎重になりますよね。
勢いも大事だとは思うんですけど、それも生存バイアス入ってると思うので・・・
さいごに
ここまで書いてなんですけど、やっぱ80万円付近の壁高すぎませんか???
起業の壁も尋常じゃなく高いし。
基本的にみんな山の手前でキャンプしてる感じがするんですが。
あと、今回はあくまで単価目線で書きましたが、評価軸を変えてみるとまたぜんぜん違う景色になると思っています。
ただ上でも書いたように、もっと価値観的に狭い話になると思うので、ちょっと地図が描きづらいですよね。こういうの、事業のKPIをどう置くか難しい問題に似てる気がします。金額はPV数同様、非常に分かりやすいのでうっかりすると引きづられます。足元を掬われかねません。
基本、全部疑っていきましょう(ちゃぶ台返し)