IT業界で気づいたことをこっそり書くブログ

くすぶってるアプリエンジニアが、日々気づいたことを適当に綴っていきます(受託→ベンチャー→フリー→大企業→ベンチャー→起業)

日本のITエンジニアは別に海外(北米)に行かなくてもいい

note.com

 

私こういう記事死ぬほど嫌いなんですよね。
もちろんポジショントークというものも含まれて居ると思うんですが。

  • 書いている人の年収が外れ値である
  • 出している統計データに問題がある
  • 大局的、統計的に分析していない
  • いたずらに不安感を煽る記事である
  • ポジショントークである
  • デメリットについて語られていない

みたいなの。まあよくありますよねこういうの。
人って自分の周囲しか見えていないから、自分の選択が正しかったと思い込みたくなるんですよね。

 

NHKもこういう煽りネタやってましたよね。

“安いニッポンから海外出稼ぎへ” ~稼げる国を目指す若者たち~ - NHK クローズアップ現代 全記録

こういうの、私の数少ない逆鱗ネタなんですが。
やっぱり「騙そうとしている」みたいなのが嫌なんでしょうね。

 

今回、エンジニアリングじゃなくてただの経済の話です。
あとキャリアパス

 

 

日本の賃金はなぜ安いのか(in 2023)

「日本は安くなった」ネタは、2022年〜2024年まで活発に行われると思います。
理由は円安です。

ドル円

円は1998年の円安すら超えて今150円を超えている状態です。
原因をざっくりまとめるとこうです。

アメリカ・欧州がコロナ禍でお金をばら撒きすぎた結果、インフレになりすぎてヤバいから政策金利を上げてインフレ退治をしようとした。
日本はさほどばら撒いてなかったので、インフレにはならなかったため、政策金利を据え置いた。

結果、金利差が大きくなり、ドルやユーロが買われ円が売られた。

 

コロナ前から見て、大体ドルもユーロも対円で1.5倍高くなっています。

そのため、単純にコロナ禍前よりも海外の給料が1.5倍になったように見えます。

 

円はずっと安いままなのか?

NOです。
今、アメリカと欧州はインフレ退治のため、急遽金利を上げていますが、これを続けると経済が冷え込む恐れがあるため2024, 2025年で少しずつ戻していきます。
2024年末に130円まで戻るかどうか、と言っている専門家が多いです。

 

円安になると生活が死ぬほど苦しくなるのか?

NOです。
なぜかといえば、我々はドルで生活していないからです。円で生活しています。

じゃあどのくらい影響があるかと考えれば、当然輸入・輸出が関わってきますよね。
そこで登場するのが貿易依存度なんですが、

台湾 113%
タイ 108%
韓国 82%
ドイツ 77%
スウェーデン 70%
トルコ 66%
カナダ 55%
フランス 53%
オーストラリア 39%
日本 38%
中国 33%
アメリカ 21%
北朝鮮 4%

と、日本は貿易依存度が低いんですよね。
国内でお金がぐるぐる回ってるわけです。
そのため為替の変化が生活にダイレクトに直結するかといえばそうでもなく、iPhoneが高くなるとか旅行しづらくなるとか、そういう感じで捉えてもらったほうがいいです。

 

日本の賃金はなぜ安いのか(2000〜2023)

では日本の賃金は(ドルベースで)高いのかといえば、先進国に比べて最近は為替を抜きにしても安いのは確かです。
これはざっくり2つの理由があると思います。

 

1つは「低成長」。
なぜ低成長だったかは専門家が3時間位かけて話すことなので私は語りません。失われた30年みたいな話です。

 

もう1つは「アメリカ基準」です。
私達は、昔の「経済大国2位だった」という謎のプライドをずっと持っているため、基準を全てアメリカにしてしまっています。
アメリカは色々あって安定して成長しているため、どんどん相対的に安くなって行っている気がしてしまうわけです。

 

正直、個人的には1990年代のバブルはまやかしだと思っているので、欧州のそこらへんの国と同等な今くらいが妥当なラインだと思っています。
特に2000年以降は別に日本に優位性って無いじゃないですか?
実際には、アメリカ(人口3.3億人)、EU(人口4.4億人)、中国(14億人)に対して、なぜか辛うじて上手くいっている日本(人口1.2億人)という認識です。

 

日本の賃金は安いのか??

ほんとうに基準を変なところに置く奴らのせいだと思うんですが。
どうしても「アメリカ基準」「シリコンバレー基準」「ドイツ基準」「北欧基準」とかやりがちなんですが。

 

例えば2021年のEUの一人あたりGDPって38454米ドルらしいんですよ。
日本は39312米ドルでした。
つまり、為替抜きにすると、近年の日本はEUと同じくらいです。
ちなみに韓国も同じくらいです。
為替の影響で抜いたり抜かれたりしていますが(抜かれたことだけニュースになる)

 

そう考えると、ちゃんと「日本」と「EU」みたいに比較した場合、日本の賃金は普通なわけです。
「日本」と「ドイツ」を比較するのはおかしいです、それなら「東京」と比べるべきですよね。

 

アメリカとかいう例外と、統計の罠

アメリカは非常に順調に成長しています。
一人あたりgdpは2021年に7万ドルでした。めちゃくちゃ高いですよね。

 

ただ、これも気をつけたいのが、中央値は正社員で5.4万ドルでした。
もちろん日本の正社員の中央値は350万円なので、比べると全然高いんですが。
一部の富裕層が平均を引き上げているのには注意が必要です。

 

アメリカの中でも例外的なシリコンバレー

シリコンバレーを指してアメリカと言うのは、香港を指して中国というようなものだと思います。
シリコンバレーの年収はたしかに高いと聞きます。
ベースが20万ドルで、ストックオプションが20万ドル、みたいな話がザラだとは聞きますね。
しかしそれはアメリカ全体で見れば外れ値です。

 

アメリカ統計局が出しているものをIndeedがまとめています。

https://www.indeed.com/cmp/U.S.-Government/salaries/Software-Engineer

 

 

平均が10万ドル、高くて20万ドルと書いていますね。
ストックオプションなんてベンチャーの話ですから、そう考えるとプラスアルファも無いでしょう。
一応そこを加味しなければなりません。

 

シリコンバレーアメリカ内においてエリートなのです。

 

ちなみにカナダは?

カナダもあります。

https://ca.indeed.com/cmp/Government-of-Canada/salaries/Software-Engineer

 

平均が8万カナダドル(今1カナダドルは110円)
Highが152000カナダドルになっていますね。
1600万円くらいらしいので、記事の人は外れ値だったみたいですね。

 

職もちゃんと比較する

皆さんはアメリカでのソフトウェアエンジニアの地位が日本より高いのはご存知でしょうか。
あちらでは今や医者や弁護士と同等くらいのポジションに居ます。
当然世界中の経済やイノベーションを牽引してますから、当然ですよね。

 

じゃあ、日本のエンジニアとアメリカのエンジニアを比較するのっておかしくないでしょうか?
基準があっていません。
あまり言いたくありませんが、日本では東大卒、京大卒のエンジニアはあまりみかけませんが、アメリカではそのクラスの人達がエンジニアになります。
(平均がどのあたりかというのはちょっと調べきれていませんが)

 

条件を揃えるなら、今医者になろうとしている人に、「アメリカでソフトウェアエンジニアになれば儲かるよ」という感じでしょうか。
日本における医者の平均年収はだいたい1400万円くらい(副業含む)で、開業医だと3,4000万円くらいだそうですから、(為替差を無視すれば)そこまで違うというほどではないですよね。

 

簡単に言えば、お前らはシリコンバレーで通用しない

大多数の日本のエンジニアは、言語の壁を突破してさえ通用しないと思っていいでしょう。シリコンバレー以外のアメリカであればワンチャンいけるかもしれませんが。

逆鱗ポイント

という諸々の条件や環境を無視して「海外は儲かる」と言ってる人、鬱陶しいんですよね。
そういう人は「私はできてる」って言いがちですが、あなた外れ値ですから。といつも思います。

鬱陶しいのが、本人は騙す気がなさそうなところなんですよね。
これって言い方変えれば「俺は毎日睡眠時間2時間で努力して起業して大金持ちになったけど、なんでお前はやらないの?」みたいな感じですね。はっ倒そうか?

 

ちなみに、こんな私ですから海外で働くプランも色々考えました。
考えた結果、割に合わないという結論です。たぶん1ドル200円でも合わない。

 

シリコンバレーアメリカ・北米・海外に行ってもいい人

・国内Googleに楽に入れる人

そのくらいのポテンシャルがある人なら日本に受け皿がないので行ってもいいと思いますが。日本でもGoogleの仕事はできますし、そのクラスの人は外れ値でしょうから国内でも1500万は超えると思います。
敢えてそれ以上儲けるために渡航するべきかと言われると、正直首を傾げます。

 

・長期でキャリア・成長を考えている人

目先のお金じゃなくて、成長したいのであれば向こうの方が最前線ですから目指すべきだと思います。

 

・英語ネイティブに近く、どこでも働ける人

この場合は日本を選ぶ理由は「日本が好きだから」くらいなんですよね。

 

・配偶者がアメリカ人

アメリカが好き、アメリカに憧れがある

 

こんくらい?

要は「そんな甘い話はない」と思います。

 

日本の賃金が安くなった結果、メリットとデメリット

メリットは「海外の安い労働者」が消えたことです。自ずとへっぽこエンジニアでも生きていける環境が整いました。
最近は中国の工場から日本に帰ってくるケースもありますよね。
この30年、世界の工場である中国の安い人件費によって日本の成長が阻害されていたという見方もあるらしいので、無成長から脱出できる可能性はあるらしいです。

 

デメリットは優秀な人が日本に来てくれない問題ですね。優秀な人材の海外流出は、これまで書いた通りいうほどですが、日本or他国と考えたときに、日本の労働環境に対する魅力がほぼない状態になっています。

 

くすぶり系エンジニアの絶望

今回「いや、お前が海外行ってもさほど儲からねーよ」を書いたわけですが。
これって安心なんでしょうか、絶望なんでしょうか?
ちょうど年収で言うと500〜800万円くらいに居るエンジニアには絶望かもしれませんね。「いつかシリコンバレーに行って億万長者」みたいなのって夢かもしれませんが、実際想像以上にハードルが高く、「国内の大手外資すら入れないのに何言ってるの?」なわけですから。

 

さあみんなで絶望しましょう。

 

otihateten.hatenablog.com

 

まあそんな時に「え、なんでお前海外来ないの??」みたいな記事見ると

はあああああああああああああああああああああ!!!???

ってなりますよね、ならん?

 

あ、もしまだ学生で英語得意とかなら、留学しとくくらいはしてもいいと思いますよ。