IT業界で気づいたことをこっそり書くブログ

くすぶってるアプリエンジニアが、日々気づいたことを適当に綴っていきます(受託→ベンチャー→フリー→大企業→ベンチャー→起業)

フリーランスエンジニアの単価と「安すぎる」というコメントの謎

この記事が目についたんですが。

qiita.com

 

良いか悪いかで言ったらQiitaでそういうのは見たくないというのは個人的な感想なんですが。それは置いといて、毎度恒例、はてブでは「安すぎる」というコメントが多く見られました。

[B! エンジニア] エンジニア200人に聞いて、業務委託単価表を作りました - Qiita

 

こういう「単価出してみました」に対する「安すぎる」というブコメは何年も前から大量に見つかります。果たしてこのQiitaは安いんでしょうか?

 

 

私は「妥当」派です


2年前に書いた記事で私が同じような単価感で書いています。

 

otihateten.hatenablog.com

otihateten.hatenablog.com

 

壁の存在も大体似ていますね。6000円あたりから急に難易度が上がっています。

 

じゃあこの「安い」と言ってる人達は何者なんでしょうか?


「私の周りのエンジニアはこんな安くない」と言うようなブコメも何件も見たことがあります。
彼らの意見を総合すると

  • ジュニアクラスでも最低80万
  • 100万はもらわないときつい
  • 140万以下は安い
  • 時給というのがまず意味わからない

彼らのコメントを観察するとどうやらSIerであることがわかります。ではSIerフリーランスはそのくらいもらっているんでしょうか?
月150万円だとすると、年間1800万円です。弁護士や医者の最近の平均が年収1500万円なので、これは夢がありますね。SIのフリーランスエンジニアはひょっとしたらすごい儲かるのではないでしょうか??

 

昔、そう思って頑張って調べたんですが、そんな案件は一つも見つかりませんでした。エージェントにも何人か聞きましたが私の体感の方があってました。
SIerの業界の案件も扱ってるレバテックフリーランスの最高単価が160万円です。普通に検索すると高くて100万円前後です。
PMOレベルになると150万円単価もあるらしいですが、そこまでいくとエンジニアの枠を超えてしまいます。「一般的なフリーランスエンジニア」ではなくなるのでQiitaの記事を「安すぎる」とは言えなくなってしまいます。

 

仮説:会社間の人月単価と混同している?

例えば受託企業で働く時、1人月の案件を幾らで相手の会社に提示するかという、会社間の単価が存在します。
これは当然フリーランスエンジニアの単価よりも高くなります。
例えば昔居た受託企業では、1人月を120万円で相手の会社に請求し、それを1人月80万円のフリーランスエンジニアに作業させて、その利ざやを儲けとしていました。
このような商売になっているので、当然会社間の単価とフリーランスエンジニアの報酬は変わってきます。

彼らはこの会社間の単価とフリーランスの報酬を混同しているのではないでしょうか??

つまり彼らはフリーランスエアプなのではないかと。
SIerというのはほとんどが受託ビジネスなので、人月単価と言うと会社間のソレを指してしまうのではないかという予想です。もちろんWeb系も受託は多いですが、声がでかい人は自社サービスであることが多いので人月単価と言えばフリーランスの報酬のイメージが強いと思います。

 

会社間の単価、フリーランスの単価、正社員の給料の差

妥当性ではなく相場として、大体こういうふうになっていると思います。

 

正社員の給料10万円に対して、会社間の単価が24万円くらいで、フリーランスの単価が16万円。

よりリアルにすると

正社員の給料50万円に対して、会社間の単価が120万円くらいで、フリーランスの単価が80万円くらい。
正社員の給料600万円に対して、会社間の単価が1440万円くらいで、フリーランスの単価が960万円くらい。

正社員は大企業と中小企業でまた違うんですが、ざっくりこのような感じだと思います。
売上1000万円稼ぐ正社員の給料が大体420万円くらいになるので、感覚としてあってるのではないでしょうか?

※この計算は労働分配率の高い中小企業に限られます。大企業だと労働分配率が非常に低いことがあります。

 

正社員の給料と、フリーランスの報酬はなぜ差があるのか

ここらへんです。たぶん。自信薄。

 

フリーランスの報酬と、会社間の単価はなぜ差があるのか

  • 契約形態(準委任、請負)
  • 信用度
  • 作業の広範さやサービスの違い
  • 相場

ここらへんだと思います。これも専門ではないので自信薄。

 

正社員とフリーランス、額面で何倍の差があるか?

フリーランス/大企業 だと1.55倍くらい
フリーランス/中小企業 だと1.35倍くらい

の差があります。
差が大きいほど福利厚生の差があるということになります。

福利厚生が大きい大企業で600万円もらってる人は、中小企業では680万円、フリーランスでは930万円稼がなければ下がった事になります。

 

あと、CTOってそんな稼いでなくない?

ググれば大量に出てきますけど、平均すればだいたい784万円らしいですよ。何でそれがフリーランスになって年2000万円に化けるんですかね?

 

時給にしっくり来ていない人ら

最近Web系では人手不足やら働き方の改革やらなんやらで時短での労働が増えてきたと思います(体感)
そのため副業や複業が増えてきていて、時給という概念が強めに前に出てきています。
あとは準委任契約をすれば140〜180時間など、時間のレンジで契約してそれをはみ出したら精算という形になるので、その時に時給というのが登場します。
最近のWeb系におけるフリーランスエンジニアには時給は馴染みがあるのですが、それにしっくりきていないということは労働形態や契約形態からして別物ということになります。前提を履き違えた上で安いだと高いだの言うのはエンジニアとしてどうなんでしょうか。

 

おまけ:他の業種・職種の単価など

頑張ってググればSIer方面の会社間の単価が出てきますが、上級SEで大体160万円とかそこらへんらしいです。IBMとか日立とか富士通とかそういうところのSEです。いわゆる元請けや1次請け(門外漢なのでググった情報でしかないですが)
Webの受託企業だと会社間で120万円は中々いかないと思います。120万円いくと大企業からも「高いね」と言われるらしいです。昔居た会社でPMが言ってました。
上でも書きましたが、PMOになるとフリーランスの単価が150万超えることもあるそうです。フリーのコンサルの単価はググれば200万とか出てきますけど、案件の難易度が「これ誰ができるの?」というレベルで、個人的には200万でも安いと感じる物が多い印象です。
Web系におけるフリーランスエンジニアの単価は大体65万くらいが平均になってきます。50万切ると安い印象があります。Qiitaの元記事では1,2年目のエンジニアについて言及が有りましたが、ここらへんはそもそも相場形成がされていないと思います。フリーランスって基本的にベテラン前提ですから。
ていうかここらへんってエージェントに複数登録すればすぐわかりますよね。

あと注意したいのがWeb系副業の単価で、副業になると相場がかなり落ちると思います。大体2500円〜3500円/時の案件が結構多いです。商流によってはそうではないケースも増えてきていますが。副業は案件数がまず少ない上に、やりたい人が非常に多いので需要と供給で買い手市場なんです。例えば大企業の福利厚生をある状態で副業をすればフリーランスほどの単価がなくても皆やりたがるんですよね。

 

追記:PMO案件の単価のグラフ発見、中央値で120万くらい?

案件実績 | PMOコンサルティングプロジェクトならPMO案件.jp

 

追記:総合して考えると、大企業の年収800万を超えるようなエンジニアは正直フリーランスエンジニアになってもメリット薄いと思うんですよね。もちろんそれを修行と捉えてその後でまた正社員に戻るなら別ですけど。あとは時短でヌルく生きたい人とかも別ですが。

 

おまけ:120万円の単価を超えるにはどうすればいいか?

前に書いた記事を元にすると、最近の私はここらへんです。

 

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完全に「現実的に不可能」の更に外にいってますね。
2年でもう昔考えたラインをぶっ壊しています。
なんか、120万円とか150万円とかそこらへんを超えるには天才でない限りそこそこ無茶をする必要がある気がします。あと「こうすれば超える」というのが無いと感じます。パターン化が難しい。むしろそういう替えの効かない経歴になってくると超えるんじゃないですかね?
超える兆候はあると思います。営業せずに勝手に仕事が入ってくるとか。前に参考にしたmizchiさんも似たこと書いてた気がします。
あとやっぱり法人化はでかいんじゃないですかね。ぶっちゃけよくわからないですけど。
請負にすれば上がるのかどうか、というのは私はまだ知見がありません。請負にすれば上がるのか法人だから上がるのか、最近はラボ契約というのもありますし。あれってたぶん準委任ですよね??

 

まとめ

推測の域を脱さないですけど、勘違いしてる奴らが多いのでは?というのが結論です。

 

こういうコメント見る度に昔から腹を立てていまいた。
例えば自分が妥当だと思ってる報酬があって「安すぎる」というコメントがあったら、それを見た人にとって精神衛生上良いことは一つもないですよね。しかもそれが真実ならともかく勘違いなら尚更です。私はまだそういうのかなり調べるので良いんですけど、若手とかが「月120万円くらいもらえるんだ!」とか「今の会社は不当に安い報酬なんだ!」とか勘違いしたり、「こんな安い単価を受けちゃダメだぞ」を真に受けたりしたら可愛そうだなと思いながらいつもそういったコメントを見ていました。
こいつらただの世間知らずでは?そういうのに限って経営者だったりするから余計腹が立つんですよね。200人に聞きましたというアンケートなのだから、自分の感覚と合わなかった時には前提を疑うべきだと思うんですが。

 

Web系の人は「会社間の単価」というものに対する馴染みが薄めなのでそういうふうな声が出てこないんですけどね(Twitterとかでは安いというコメントは少ない・・・と思ったらバズってきて徐々に出てきました。やはり普段Qiita見てない層に届いてるんですかねこれ?QiitaってかなりWeb系寄りの情報多いのに、そこへ来て定義がどうの言ってるのもクレーマー感すごいです)

 

 

追記:「フリーランスの」と限定していなかったから?

この記事のブコメにもあった、「Qiitaの記事のタイトルに『フリーランスの』がついてない」という話。確かにさっき私も見て私も気づきました。あのタイトルだと会社間だと誤解するかもと。
なるほどこれは「業務委託単価」と言った時に想定するものに個人差があるという、名前空間の問題だったのかもしれません。
(つっても記事内の本文見れば書いてますけどね)
「業務委託単価」と言った時に人によって前提が異なるというのは教訓なのかも?

 

追記:イキリ勢?

なんか不必要にバズってしまいましたが。
この記事に対する反応を見ても、あくまで相場に対する話をしているのに
「150万以上の案件は有る。お前らが見つけられないだけ」だの
「このような安い金額で請けるべきではない」だの
「俺の周りでは皆高い」だの
「弊社はそんな安くやってない」だの
頭の悪いイキリコメントが頭の良い界隈で散見されたので、多分そういう人らも混ざってるんだと思いました。

それって例えるなら「サラリーマン200人に聞いたら平均年収が436万円でした」という話題に対して「1000万円超えの仕事はある」だの「そのような仕事はするべきではない」だの「俺の周りでは皆高い」だの「弊社の給料は~」だの言ってることになるんですが分かってるんですかね?皆知ってますし今そういう話してないです。

 

百歩譲って「こんなに安いとは嘆かわしい。皆もっと上げていこう」とか「具体的な金額を出すと相場が硬直化するから良くない」とか「もっとこうすると単価は上げられる」などは筋が通ってると思います。

 

追記:発注価格で考えてたから?

フリーランスが受け取る価格じゃなくて、発注側の価格で考えると非常に安く感じる説。これもあるかもしれませんね。
私は最近ほとんど直接契約なんですが、世の中の多くはエージェント経由です。
エージェントは噂ベースですが5%〜20%は抜くでしょうから、80万円は、発注側からは84〜96万円に見えるわけです。時給ベースで考えれば5000円が5250円〜6000円に見える感じですね。ただ、その程度の差なら「安すぎる」という感想より「やや安い」くらいの感想が出てきそうですけど。