IT業界で気づいたことをこっそり書くブログ

くすぶってるアプリエンジニアが、日々気づいたことを適当に綴っていきます(受託→ベンチャー→フリー→大企業→ベンチャー→起業)

【補足】ただより怖いものはない?フリーミアムが市場生態系にもたらす影響

togetter.com

b.hatena.ne.jp

いっぱいスターもらえたので補足

 

このまとめられているテーマとしては
「あちらが無料にされると、こちらとしては商売上がったりだ」
「市場における購買生態系を破壊するので辞めてくれ」
っていう話ですね

それ自体が悪質なのか、それとも自然なことなのか、どう対処すればいいのか考えていきます

 

「無料」「廉価」にはいくつかパターンがある

この件は話がいくつか混ざっているので、パターンを明らかにしないと議論するのが難しいと思います

  1. 「基本無料」で入り口を広くするフリーミアムモデル
  2. 価格差別を狙い、ライトユーザーには無料で提供する
  3. 技術的なイノベーションにより、流通革命が起こり値段が暴落した
  4. ビジネスモデルのイノベーションにより、そこでお金を取らなくて良くなった
  5. 調達が無尽蔵に行われるため、一旦無料にして競争力を高める

それぞれについて考えていきます

 

最も悪質なのは、巨大資本によるゴリ押し(5)

巨大資本によって大きな会社が一時的に赤字覚悟で商品を提供すると、競合となる小さい企業は潰れてしまいます。
するといくつか問題が発生します。

  • 市場が食われ、小さな会社の人達が困る
  • 大きな会社に独占され、値段やサービス内容が自由に設定される
  • 大きな会社が撤退すると、買い物難民が発生するリスクが有る

この件はウォルマートで有名ですね(メッカはアメリカです、日本ではありません)

買い物難民 - Wikipedia

 

個人的に印象的だったのはTwitterです
Twitterは最初の数年、広告がなく「スゴく見やすいサービス」でした
もちろん無料です
あれでは他社が太刀打ちできませんね
じゃあその時Twitterはどうやって稼いでいたかといえば、稼いでいなかったのです
数十億円の調達により運営されていたわけで、市場としては正常ではなかったわけです

ちなみに今になってTwitterはお金を回収すべく苦しんでいますが
それが上手くいかず潰れてしまったら買い物難民のような状態がユーザーや市場に起こるわけです

一応これらは独禁法の範疇らしいですが、基本的に大きな市場にしか適用されないですよね
Appleが音楽分野に乗り出した時に、ようやく独禁法の話が出た程度です
むしろこういった話は小さい市場で日常的に行われていると思いますが

 

巨大資本が悪質である理由

これは非常に難しいですし、人によるので個人的な意見になってしまいますが
ユーザーの利便性を第一に考えているというよりは、市場を支配したいからという理由で行われている点が悪質だと思います
(「調達できてしまった」状況に故意性があるかは怪しいですが)

チェーン店なんかは割りとやりますよね

ドミナント戦略 - Wikipedia
他社を駆逐して独占するのが目的になっています

まあ悪質は悪質ですけど、正常に規制されていない現状は「やらないと負ける」状態なので、そういった会社を責めるのもなかなか難しいですが

 

巨大資本と競合してしまったら

ダメそうなら撤退するべきだと思います
もしくはドメインを小さく絞るかです

もし個人であるならば、いっそ巨大資本の傘下に入ったほうがいいかもしれません
いずれにしても市場がその先どうなるかを見極めなければなりません
ただし残念なことに、市場がその先どうなるか見えてる人は極めて少数派ですし、雑誌など情報を漁っても頓珍漢なことを書いていることが多い印象です。

 

ビジネスモデルの変革(1,2,4)

フリーミアムモデル、価格差別、ビジネスモデルの工夫は最近多く
Togetterの記事で最も語られている部分ではないでしょうか?

 

例えば

お客さんが1万人居て、売上が1億円の会社があるとします
そのとき、1万人のお客さんにそれぞれ1万円出してもらうのが従来の考え方です
これを工夫して、1万人のうち100人に100万円出してもらい、残りの9900人は無料で提供しても、売上は1億円となります
※ちなみにこれを「1万人のうち1人に1億円出してもらう」にすれば巨大資本の状況と一致しますね

フェーズを分ける手もあります
1万人のうち、1年目は全お客さんを0円にします
そして2年目に全お客さんから2万円もらったら、1年あたりの売上は1億円になります

商品を分ける手もあります
1万人に商品を0円で提供し、その代わりに別の商品を1万円で購入してもらえれば
1年の売上は1億円になります

いずれにしても、売上の結果は同じです
何が問題でしょうか?

 

ゼロ円モデルの悪影響

上記のような場合にも問題が幾つか発生します

  • ゼロ円ユーザーは客とみなされない
  • 局所的に他の市場を駆逐する(巨大資本と同じ状況)
  • 局所的に仕事を奪われる人がいる

Togetterで言われていたのはここらへんですね

 

ゼロ円モデルをやめよう!は可能か?

実際のところ不可能に近いです
こういったモデル、つまり、お金を回収する対象・時間・金額を戦略的に分けるというのは大昔から行われてきたことです
紙芝居のビジネスモデルとか、ハンコ屋さんのビジネスモデルとか
一見すると「正常な」市場に思われる業種も、裏を返せば取りやすいところから取り、取りづらい所からは雀の涙ほどしか取らないという方法が取られてきました

自分が払っている様々な料金、果たしてそれは「正常な」額でしょうか?
実は「そんな端金じゃ会社なんてやってられない。○○さんが払ってくれているから持ちこたえている」なんて状態かもしれません
正直、そうしないと経営サイドとしてはやってられないわけです

とは言えその事実に労働者や消費者は気づいていないのですが

 

技術的な影響による市場破壊(3)

最もどうしようもないのはこれだと思います
インターネットの登場でいくつの仕事が成り立たなくなったでしょうか?

長い歴史を見ると、技術の進歩というものは必ずしもよいことばかりではありません
市場破壊を招きますし、それに携わる労働者を絶望に追いやります

少し近い事象として流通革命もあると思います
「産地直送」をやられることで困った労働者はどれほどいるでしょうか?

とは言え、今更そんなこと言っても、不便な昔に戻ることはできないはずです
昔から人間はそうやって、進み、壊し、また作り、進み・・・と前進してきました
農業従事者・工業従事者・家電やらサービスやら、そのうちインターネット業も壊されることでしょう

それに憤りこそ感じても、悪と断じることは難しいはずです

 

破壊的イノベーションは異常事態か?

これらは総じて破壊的イノベーションなんて言ったりします
もちろんメッカはアメリカです
これまでを否定し、より良いやり方を生み出す一方で、既存の何かを壊していっています

こういったものは一見世にも恐ろしいことのように思われがちですが
よくよく考えてみると、近代はこの破壊的イノベーションのオンパレードでした
人生で40年位働いたとすれば、そのうちに数回は破壊的イノベーションが起こり、働き方や常識を塗り替えることを余儀なくされる人がほとんどだと思います

ただ、ここ20年くらいは不思議なほど安定していました
そのため、仕事のやり方というものは定年までずっと変わらないのだろうという、間違った考えが出回ったと思っています

ビジネスモデルは変わります
市場も簡単に消え去ります
それは数年に一回大きな地震が起きるのと同じくらい、今の世界では当たり前のことだと思っていいのではないでしょうか

 

破壊的イノベーションに対処する

今の仕事や、今の市場がいつまで続くか
それは誰にも分かりません
分からないことが正常であって、ずっと同じ仕組みで世界が回ると思っている方が勘違いなのでしょう

でもそれじゃあどう対処すればいいのでしょうか?

  • 局所最適に陥らない
  • よりコントロールできるよう上流にいく
  • アンテナを張る
  • ビジネスを理解する
  • 代えがたい価値を出せる人間になれるよう努力する
  • より安定した市場を相手にする
  • 変化のスピードが早い業界へ行く
  • 他業界でもやっていけるよう努力する
  • いっそ自ら壊す

例えばITエンジニアはこう言う動きをできている人が他業界より多いと思います
IT界隈はドッグイヤーと呼ばれるほど変化が激しいので、置いてけぼりにされないような努力の仕方をしてる人が多いですが
それでも明日には仕事が消えて無くなるのではないかと戦々恐々としています

 

創造的イノベーターが求められている

もちろん個人個人で対処は必要ですが
正直いたずらに破壊的イノベーションを起こしているベンチャー企業は好きじゃありません
破壊と統合によって、よりよくなる業界もありますが、特にベンチャーは壊すだけ壊して放置みたいなパターンがあります、自分でやるときは気をつけたいですね

もう一つ、その市場の生態系が崩れて困った労働者たちを活かすマーケットを作るタイプのイノベーターが世の中にまだ少ないなと言う感じがします
実は私もそういうタイプの会社に今在籍中ですが
確かに市場をまとめ上げつつ儲けなければならないので、非常に難しい作業なんですよね
代表は大きなビジョンを描きつつ、方方説得に回らなければなりませんし、どこかでユーザーが割を食うみたいな事になっては意味がありません
 
でもそういった市場づくり、仕事づくりがより強固な形で再生成されていけば
より良い世の中にもなるし、労働者側はビジネスの事を気にせず、ひたすらクオリティアップに注力してもらえるのではないかと思います

 

おわりに

なんかまとまりがないですが以上です

ユーザーサイドのことがあまり書けませんでしたが
ユーザーとしても、基本的に全てが無料で、より良いと思うものにより高い額を出せるという状態は悪くないのではないでしょうか?
要はみんなが食いっぱぐれ無ければいいのです

世の中に愚痴を吐くよりは、そういうビジネスモデルがあるのかとまずは関心してみてほしいです

 
あと元の話題であるキンコンAmazon1位の件ですが
あれはまた別の話で、ランキング制度の問題ですよね
ランキングというのは奥が深いと思います
これも難しい問題ですね

(あの人が言っていた意見については、私はほぼ同意です。絵本は読んでませんが!w)