ノーコードがバズってるみたいですね。何度か複数の記事を見ました。
ノーコード系の記事を読むとすごく良さそうに見えてきますが、個人的にこれ系がユーザー企業以外には上手くワークしないのではいうのは数年前から思ってました。私の認識を書いておきます。
・・・
とやる気を出してみたは良いものの、ちょっとこの話だるいですねこれ。
「SaaSもそろそろ頭打ちだしエンジニアが絡んでもしょうがないでしょ、PaaSならともかく」で全部済むと思うんですがどうでしょうか?(投げやり)
- サービス界隈はどうなっているのか?
- SaaS文脈のNoCodeはエンジニアの介在する余地がない
- そもそもSaaS規模が大きいわけでもない
- 新しい◯◯業界は見つかるか?
- EC業界はそもそも特殊
- PaaS文脈でのNoCodeはどうか?
- 誰にとってNoCodeは有益か
- ユーザー事業者にとってNoCodeは有りなのか?
- 新ジャンルのNoCodeをモックや価値検証に使うのは良いのでは?
- NoCode+マイクロサービスがこれからの流行りだろ?
- 使いみちをもっと考えてみる
- まとめ
サービス界隈はどうなっているのか?
大体1個のサービスの形を想像してください。例えばEC、SNS、出会い系、ブログ、人材系、もしくはツールだと写真加工とか、メモ帳なんかでもそうです。
それらをカオスマップにすると大体は以下のようになっています。
少し分かりづらいですが、該当サービスを使いたいユーザー企業が10万あったとして、どこにぶら下がるかという話です。完全フルスクラッチは自分たちで運営するパターン。生成系サービスは自分たちで運営するけど、フルスクラッチではないパターンです。完全フルスクラッチと、生成系サービスの間に実はCMSのようなものがあります(WordPressとかEC-CUBEがわかりやすい)
EC業界が非常に分かりやすいです。
昔はこの「完全フルスクラッチ」が多かったのですが、徐々に汎用の方に流れていきました。要は戦国時代で淘汰された感じです。
歴史的に見ると、ITバブルが専用全盛期、2010年前後が半自動生成の全盛期(CMSのような、数十万円で導入するもの)です。
アプリが登場してからは一気にALLジャンルが増えて、その後徐々にニッチジャンルが増えてきて(というか、規模的に会社が成立するくらいに市場が成長してきて)という感じです。生成系は2010年頃から徐々にという感じですね。スマホ登場後くらいからです。
なので「え、今更NoCodeの領域がバズるの?」という感じで困惑します。なんか遅くない?
って、よく考えたらNoCodeってSaaSみたいなもんですよね、名前を変えただけかもしれません。
SaaS文脈のNoCodeはエンジニアの介在する余地がない
敷いて言えばデザイナーなら介在余地があるかもしれませんが、エンジニアを排除して安く早くあげようって時にエンジニアの存在は邪魔です。
もしやるとすると導入コンサルという立場になります。
そもそもSaaS規模が大きいわけでもない
ここが分かりやすいです
楽天3兆円、Amazon2兆円、ヤフオク1兆円、メルカリ4000億円
みたいな状態で、SaaSであるMakeShopが1600億円、BASEが210億円です。
大体ニッチジャンルの1社2社と流通規模が同じくらいじゃないでしょうか。minneは1つのニッチジャンルですが120億円です。
これらは流通総額なので、手数料ビジネスだと売上はその2%〜10%というところです。規模感的にわかりますか? 流通総額100億円だと、スタッフ数40人とかそのくらいですし、1000億円だとスタッフ数は数百人だと思います。
海外を見ると大きいように見えますが、やはり他の会社と比較するとさほどでもないです。
新しい◯◯業界は見つかるか?
あるとすればEC業界ではない、未成熟な新ジャンルのサービスのNoCode(SaaS)領域に乗っかることですが、未成熟な新ジャンルが無いんです。
そんな物ないというのは、もう投資家や起業家が何年も頭を悩ませていることです。新しいサービスは出せるかもれませんが、新しいジャンルはおそらく数十年に一度の革命的な出来事なのだと思います。
EC業界はそもそも特殊
いやいや、いろんなサービスが色々出ているじゃないか、と思われるかもしれません。それはそうなんですが、違うんです。「大量のサービスが存在していて良いジャンル」が無いんです。
例えば、ECサイト、メディア、ブログ、コーポレートサイト、くらいですかね?ツール系を除けばだいたいそのくらいです。大体のジャンルは勝者総取りで、すぐに淘汰されてしまうのです。
するとエンジニア的にはその会社しか無いので困りますし、SaaSなんて要らないわけです。位置づけ的にはSaaSとその1社が同じ立場ですね。ユーザー企業相手の商売です。
パターン化できなければNoCode(SaaS)にもできません。
パターン化できるサービスが有るなら、アプリ開発の仕事はもっと多かったと思います。ECサイト構築とかHP制作と同じ文脈でアプリ開発を何となくやって火傷した人の何と多いことか。
PaaS文脈でのNoCodeはどうか?
もっと引いて俯瞰で見ると、サービス界隈はこうなっています。
各ジャンルを全部束ねているのがAppleやGoogleで、支援している会社や、開発のためのツールを提供しているような会社があります。
ここにNoCodeの介在する余地は確かにあるんですが、それってAWSとかGCPみたいな話で、ちょっと今話題になってる文脈とずれますよね。
こっちはもちろんそこそこに伸びると思いますが、お手軽とは程遠いですよね。あれ、めっちゃむずい・・・
もちろんもう少しSaaS寄りで、お手軽に問い合わせフォームを作るとか、ビデオチャットを作るとか、そういうのは増えてる感じがしますがそれもうコーディングしてます。
誰にとってNoCodeは有益か
投資家
確かに収益の増加率は良いんです。そういう時代ですから、あと5年くらいは伸びるんじゃないかと思います。
投資家なら注目していいと思います。
ですがNoCodeの提供側にならない限りエンジニアとしては旨味がありません。
NoCode提供側
これはわかりますよね。
今の時代、会社選びをする時に、選択肢としては
- Allジャンルの会社(大抵大企業、吸収合併が多い)
- ニッチジャンルの会社(小粒だが安定してたりする)
- NoCode(SaaS)提供会社(少ない)
- PaaS, laaSの会社(もっと少ない)
のどれかです。
デザイナー・コンサル
開発以外に強みがある人は、導入支援を仕事にするのもありかもしれません。
でも予想以上に覚えることとか多い印象があります。
あとEC-CUBEとかWordPressのように、わかりやすい一個の市場として確立されていない感じがします。かといって全部覚えるのは無理です。
ユーザー事業者にとってNoCodeは有りなのか?
価値検証するならまずはAllジャンルかニッチジャンルで試した方がいいと思います。ユーザーを連れてくるのが本当に大変です。
例えば物販なら楽天とAmazonとメルカリに出して、売れるようなら独自で出店するで良いと思います。その後でより拡大しようといった際に、NoCodeなのか、ニッチジャンルなのか、となってくるでしょう。
ちなみにオールジャンルで目立つと、ニッチジャンルサービスから直接アプローチがあると思います。「うちでも販売しませんか?」みたいに。
他のサービスでも似た感じです。
新ジャンルのNoCodeをモックや価値検証に使うのは良いのでは?
まず、新ジャンルをNoCodeで作れない可能性が高いと思いますし、ジャンルとして確立された頃には既に市場における価値検証は終わって淘汰が始まっていることが多いのではないでしょうか?
NoCodeで機能作成ができるということはそういうことなんですよね。
たとえば、ある種のトリガーがあって、ヨーイドン!でいち早くサービスを作った人が勝ち、みたいな状況で、たまたまNoCodeで適合するものがあればいいですが、あるんですかね?
また、これがすごく難しいんですが。NoCodeでサービスを作って上手くユーザーが付かなかった時、ちゃんと価値検証できてる自信あるでしょうか。機能追加してまた試したくなりませんか?これまで色んなプロジェクトで色んな起業家を見てきましたが、とてもじゃないですがやめそうになりです。価値検証のパラドックスと言うか、「試し」は大抵の場合その人にとって9割確信があるんですよね。じゃあ二度手間にしかならないのではないでしょうか。
どうにも、上手く使い所がありそうで、本当に使える人は一握りなのではないかと疑っています。
NoCode+マイクロサービスがこれからの流行りだろ?
そこまで行くと設計が必要なので専門性が必要なのではないでしょうか?
NoCodeのPaaSですよね。
使いみちをもっと考えてみる
自分の不得意なデバイスでなにか作りたいときに使うのはどうか?
色々考えましたが、これは有りかもしれません。
例えば私はiOSアプリ開発者ですが「このサービスを作るなら先にWebがあって、その後にアプリだな」というときに「よし両方作ろう」は無理です。
Webの方は凡庸だけど、アプリだと自身がある。でもWebのランディングページが必要!みたいなシーンだと使えるかもしれません。どうなんでしょうか?レア過ぎます?
Laravel覚えるかNoCode覚えるかで迷うことになるんですね・・・うーん。
ファウンダーが動くレベルのモックを作る
これも有りかもしれません。
起業家志望の方がたまにWebを勉強するためにスクールに通っていたりしますが、それよりなら動くレベルのモックアップを作って、「これに機能追加したものを作ってくれ」と依頼を出せば非常にスムーズです。α版として公開してしまうのも有りですね。そんなことできるのかわかりませんが。
企業が超低予算でとりあえず動くものを作る
自社に強みが有り、そのサービスを出せば結構行けると思うけど、稟議が通らない!じゃあ一旦出して反響が多いことを証明しよう、そして稟議通して予算もらってフルスクラッチしよう。
みたいな話では有りかもしれませんね。
社内向けツールとして活用する
あっ、これ結局SaaSの利点一覧だ!
要は
- 採算がさほど見込めない
- 技術者が居ない
- とりあえず作りたい
こんな状況ですか?
まとめ
誤解されそうなので念の為に書くと、もちろんこの領域は適切なユーザー企業が適切な事業ステージで使うには素晴らしいモノだと思っています。
別に新しい概念ではない+エンジニアが介在できないってだけです。
「新しい概念でない」っていうのは、いつものやつです。
1.既存の上手くいってる概念をグルーピングして、新しい名前をつける
2.それに属するモノだから上手くいきますよ!と喧伝する
1で取り上げられるのは古くからあるサービスだし「今これから来る」と言う説得材料にはなりません。利用するのはいいですけど、技術者的にはニッチの細道に突入する感じになるので、死なないように程々に。
これは一見すると非常によく見えるので、これからどんどん持ち上げ記事が出ると思います。おっさん連中は面倒くさいから見て見ぬ振りするんですよね。
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蛇足追記:
SaaSカオスマップを見てみよう
https://thebridge.jp/2019/09/smartcamp-saas-market-report-2019
ガチのNo-Code Developmentの例 kissflow
https://kissflow.com/no-code-platform/
こういうのはもはや「お手軽」「技術者以外が」って文脈は消えて、新言語に近いですね。これは純粋に宗教戦争になりそう。
もう少し中間のNo-Codeの例
https://techcrunch.com/2019/11/04/microsoft-launches-power-virtual-agents-its-no-code-bot-builder/
あ、何で流行ってるか少しわかりました。
これはRPAとかワークフローオートメーションが流行ったから、それをひっくるめてNo-Codeという概念が作られ、案の定言葉の定義が曖昧だから妙なバズワードになってる感じかもしれませんね?
ってなると、やはり基本は業務効率化の方に使うことを意識したほうが良いんじゃないでしょうか??
まあそっちは伸びるかもしれないですよね。
サービス開発に使うっていうのは応用なのでは?
ちなみにLow-Codeという概念もあるそうです。