相変わらず会社の状況が燦々たるありさまだが
似たような組織規模、調達額、内容で上手くいっているところもある
そんなわけで失敗の原因と成功の鍵を最近考えることが増えた
ITサービス作りはそもそも難しいことだ
ITベンチャーに飛び込むような輩に、敢えて言うこともないだろう、と思っていたが
意外と分かっていない人だらけだということに気づいた
いろんなシードレベルの会社に訪問(転職活動)してると、誰もが優秀な経歴を持つのに、落とし穴の半分くらいにしか気づいていない
他方で、一つモノを作って(例えばweb)ソコソコ伸ばして次のプロダクトにトライするようなフェーズの会社の人達は、その落とし穴の多くに気づいている
ITサービスを特にベンチャーで作り上げる際には、資金と時間を除けば7つの難しさが有ると思う
1.開発がそもそも難しい
開発に関わってる人なら分かっていると思うが、ちゃんとしたクオリティで価値あるものを完成させるというのはそもそも難しい
色んなスキルが必要だし、泥臭い作業も発生する
受託開発会社が世の中に多いのはそのためだ
2.ITサービスのように、一から物を作ることは難しい
開発者は気づきにくいが、サービスを設計し作り上げるのも難しい
ITサービスなんだから既にあるパターン化されたものではない、ある程度新規性を求められるもので、個人的には創作物の一種だと思っている
経験、才能、情熱、分析力を駆使して、それなりに長い時間ウンウン悩んでようやくいいモノができる
3.ビジネスモデルを作るのは難しい
「どういう価値あるサービスにするか」ができたとして、それでどう儲けるかはまた別の話になる
特にITサービスは無料が基本みたいな部分があるため、新しいビジネスモデルを作ったりするがもちろん難しい
専門スキルも必要になるし、月1000万円の売上から、月10億の売上までスケールさせる設計になっていなければならない
4.コミュニケーションが難しい
開発、サービス設計、ビジネスモデル
この3つをさらに合体させて一つのプロダクトを作らなければならないわけだが
この3つは大抵複数人で作られるため、それぞれすり合わせが必要になる
例えば、サービスから開発に落としこむ役割で言えば、ディレクターとか、PMとか、あるいはITコンサル、SEが必要になる
人数を増やせばいい物ができるかといえば全くNOで、むしろ少ない方がマシだ
世の創作家たちを見てもらえればわかると思う
ある程度の骨格ができるまでは、多くても2、3人くらいのほうがいい
5.人を用意するのが難しい
上記のような人をまず用意するのが難しい
見極めも難しい
例えば開発畑を歩んできた人は他がわからないし、企画畑の人は開発が分からない
少しは分かる!という人でも、じゃあどういう人材が良いかまでは難しいと思う
6.知らない人と一緒に作るのが難しい
上記のようなプロセスを、知らない人が一気に集まってやるのがITベンチャーだ
普通の会社は30人の中に3人混ざる、みたいな感じだろうが、ITベンチャーは個々の信用関係を築けていないタイミングでいきなり人を集められるため、難しいコントロールが必要になる
7.計画を立てるのが難しい
サービス、ビジネスモデル、開発は疎結合ではない
それぞれが徐々に影響し合いながら作られる
コミュニケーションが難しく一回で全部片付けようとすると破綻するので、計画的に、あるいはアジャイル的にモノを仕上げていかなければならない
これら難しい点を、全て及第点に抑えてようやく成功に至る
受託会社や普通の会社ではどうしているか?
このように、とにかく難しいだらけのITサービス作りだが
受託会社など、普通の会社でも同じことは行われている
ただ違うのは、それぞれが疎結合になってることが多いということだ
受託会社は開発と一部ディレクションや企画のリリースを担保するだけ、ビジネスモデルはコンサルが担保(例外はあるが)するなど
顧客はそれらの責任を対価を払うことで回避し
かつそれぞれを疎結合にすることで完成させやすくなっている
もちろん企業内で全てを完結させようと言う社内ベンチャー的な取り組みも有るだろうが
その場合はITベンチャーと難度は大して変わらず失敗率も高いというのは常識だと思う
成功の鍵は人
一にも二にも無く、人なのは間違いない
VCがアイディアにではなく人を見て金を貸すというのは、なるほど理にかなっている
ではもっと詳しくいうと何だろう
1.トップの頭の良さ
身も蓋もないが、トップ(ファウンダー)の才能が一番重要だ
人を集めるのも彼らで、最初の計画を立てるのも彼らだから、7つの難しさの半分以上を彼が担っていることになる
プロダクトを一回作ってしまえばその荷は若干降りるが、最初の2年位の舵取りはとにかくトップに依存する
ちなみに更に細かく突き詰めれば
・論理的であること
・説明できること
・論理の穴が少ないか、ヒアリングなどして埋められること
が最低条件に来ると思う
2.全体の議論力
複数人でプロダクトを作れるほどの議論力が必要になる
ファシリテーターも重要だし、個々の発言者の議論力も重要だ
1人でもおかしなのが居ると全体がどんどん疲れていく
しかしまともな議論力を持っている人はかなり少ない
コミュンケーション力ではなく、クリティカルシンキングができなければならない
複数人で難解なパズルを解くようなものだ
3.人の少なさ
コミュニケーションコストという言葉があるが、ITサービス作りではコストよりも重篤な事態を引き起こす
コミュニケーション破綻と言った方がいい
なので、人は少ないほうが良いというか、少なくないとまずい
ただ、ここで言う「人」は、議論に参加する人とか、意思決定に関わる人なので
そこを分断するとか、窓口を用意して部署化するなら多くても何とかなるかもしれない
何故か、10人以上の会議をイイコトみたいに捉える風潮や、当事者意識を持って会議で皆発言するべきみたいな意見があるが
意思決定や設計に関わる会議では、意思決定者を絞るとか、前もって会議の準備を入念に行うなどして、破綻しないよう十分な対策をしなければならないと思う
(普通の会社だと、自然と意思決定者が決まるが、ITベンチャーでは自然な上下関係が作りづらいので難しい)