IT業界で気づいたことをこっそり書くブログ

くすぶってるアプリエンジニアが、日々気づいたことを適当に綴っていきます(受託→ベンチャー→フリー→大企業→ベンチャー→起業)

いちから株式会社の経営、大丈夫?~経営状態を外から見る難しさ~

2022年追記

※これは2019年に書いたものです。
えにからが上場して、しかも決算も好調ですね。完全に杞憂民だったようです。
なんか心配したよりも相当上手く経営した上に、市場からの期待感も異常に高いようです。こりゃ10年は安泰だな。

 

ーーーーー

 

こんにちは。好きなVTuber月ノ美兎と桐生ココとさくらみこです。
ベンチャー界隈で生きてる一介のフリーエンジニアです。経営のプロではありません。

 

ひょんなことから、最近いちから株式会社の社員数がどんどん伸びていることを知って、私の機器感知センサーが反応したのでちょっと調べました。
そこから「ベンチャー企業の経営状態を外から見るのって大事だけど難しいよね」という話を書きたいと思います。

 

ソース

speakerdeck.com

 

2020年1月時点の社員数は131人だそうです。
(社員数がなんかKPIみたいになってる不思議な図ですね)

 

f:id:otihateten3510:20200212114520p:plain


 

 

結論:いちから株式会社(にじさんじ)は大丈夫そうか?

わかりませんでした!!(敗北)

 

予測が難しいのですが、最低限2020年はどうこうなることはないのではないかと思います。2021年は正直わかりません。

 

しかし、131人くらい社員が居てもどうにかなるのでは?と思えるくらいにはVTuberで動く金が大きくなっていたことに驚きました。

 

ベンチャーで生きるなら会社の経営状態を見極めたい

ベンチャー界隈で生きるうえで重要なスキルがあります。それは会社の経営状況を何となくで良いので察するということです。ベンチャーは経営状態がすぐ悪くなります。

とは言っても順調な会社の経営状態は外から見てもブラックボックス過ぎてわかりません。非常に単純なマネタイズをしているところならまだしも、マネタイズ経路が複数あると分析が詰みます。
だから大抵は死亡フラグが立ってるかどうかを観察するしか無いと思います。

 

会社が傾いた時、社員に起こる悪いこと

経営者でもない限り、実は会社が潰れようが損害は被らないはずです。そのように守られています。
ベンチャー企業を渡るようなジョブホッパーなら尚更です。

しかしやはり傾いた時、色々な弊害は起こるものです。

  • 未払い給料が発生する
  • 自宅待機が発生する
  • ブラックな働き方になる
  • 喧嘩になり、無駄な労力をもっていかれる
  • 転職の際、印象は良くない
  • 精神的に苦痛

私は一回だけ経験がありますが、あれは嫌なものです。
ちなみに未払い給料は条件が合えばいくらか国が保証してくれます。

 

otihateten.hatenablog.com

 

 

ベンチャー企業死亡フラグ

  • 性急な規模拡大、社員を増やしすぎる
  • 多角化
  • 新サービスを作ろうと模索している
  • 資金調達のおかわり
  • 資金調達が大きすぎる
  • 新しすぎる領域にチャレンジしている

規模拡大について、案外ピンときてない人が多いように思います。

例えば10年後に社員1000人が食っていける企業に成長すると分かっていても、いきなり社員を1000人抱えたら潰れるわけです。じゃあどのくらいの社員を抱えたらいいかと言えば「毎年度死なない程度」です。1回でも資金ショートしたらアウトです。

 

だから上場を目指すベンチャーは「お金を調達しつつ毎年死なない程度に規模を拡大していく」という難しいことをしなければなりませんし、そのために翌年どのくらい儲かるかを予測しなければなりません。
でも、1年後にVTuber業界がどのくらい大きくなってるか検討がつかないですよね。新しい業界ほど読めないのでむずかしくなります。

 

ちなみに規模拡大の怖さを知るにはしくじり企業が面白くておすすめです。こちらはあくまで大企業の話ですけど。

カカチャンネル - YouTube

 

あれ、いちから大丈夫?(杞憂民)

 話を戻しますが、いちから株式会社は2019年に社員数が100人くらい増えているようです(大体6倍くらい?)
このような規模拡大をしてうまくコントロールしているところ、余り見かけません。調べたらfreee株式会社くらいですかね?

創業6年で社員465人 freee社長の組織のまとめ方 | 経済プレミアインタビュー | 編集部 | 毎日新聞「経済プレミア」

 

例えば皆大好きミラティブ様は50人に満たないそうです。
Showroomの従業員数は110人。ホロライブ運営のカバー株式会社は50人程度です。
そしてこれらは社員数ではなく従業員数です(アルバイトやフリーランスを含んでいる)
いちからがどれだけ大きくなったかが感覚的にわかります。

 

直近でどこまで社員数が増えそうか

こういうのは大抵会社の面積で見ると早いです。

いちからは最近引っ越したようです。
ここ。こっちは7階、いちからは10階ですが。

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340坪、賃料1280万円/月です(管理費込み)
従業員1人あたりに必要な広さは2.5〜4坪くらいらしいので、だいたい85〜136人程度。
ひょっとしたらもうあまり増えないのかもしれません。

社員が増えるのは良い傾向?

これも非常に勘違いされがちです。
事業の形態によって、
「社員が増えれば売上と利益が増えるタイプ」の会社と、「社員が増えても売上と利益は増えないタイプ」の会社があります。
前者は社員が増える=会社が軌道に乗っていくなので、社員が増えることは会社の成功に近いです。一方後者は社員が増える=会社のコストが増えるなので、社員が増えることが必ずしも会社の成功とは限りません。KPIになりえないわけです。

 

従業員が増えれば売上と利益が増えるタイプ

  • 受託会社
  • 派遣会社
  • 建設会社
  • 営業が必要になる会社(ちょっと詳しくない)

従業員が増えても売上と利益は増えないタイプ

  • 事業会社
  • 人が増えるとそれぞれの売上が競合してしまう会社

 

参考

otihateten.hatenablog.com

 

いちから株式会社は後者です。
ビジネスの構造としては、同業他社であればUUUMに似ていて、他業種であればフリーランスのエージェント会社に似ています(例:レバレジーズ)

このタイプは基本的に「社員を少なく、人材を多く」でやっています。
少し調べたところ、UUUMは従業員数382人(2019/05)、チャンネル数約9000だそうです。粗利益は54億円(2019)らしいので。

従業員1人:チャンネル数20以上:粗利1400万円

で非常にしっくりきます。

(例えばフリーランスのエージェントは1人の営業が大体20前後くらい見ていると思われます)

 

それでいちからですが、現状

社員数131 ライバー数100程度

なので、「おっと、大丈夫か?」という感じです。
これが私が今これを書いている理由です。

 

とは言っても、もちろん1人のフリーランスと1人のライバーが同列に語れないのは当たり前です。
例えば「5人の大人気アイドルを社員30人体制で運営する」なら有り得そうですよね?
粗利2億円くらいあれば回るわけですから。 

 

いちから(にじさんじ)はどれだけ儲けてるか

で結局実際の金額を計算してみないとわからないわけなんですが。
あまりにも仮定だらけ、かつわからない数字が多すぎるので、話半分どころか話10%程度で見てほしいです。

 

資料の私の知識から、マネタイズはこの様になっていると思います。

  • Youtube動画広告
  • Youtube投げ銭
  • Youtubeメンバーシップ
  • BOOTH グッズ
  • Pixiv fan box
  • ライブ
  • 各種イベント
  • タイアップ広告・企業案件

外から見てわかるのはYoutube関係だけです。
それ以外はもうフェルミ推定すら許されない感じです。

Youtube動画広告は何となくわかります。
いろんなデータがあるので。

https://socialblade.com/
ユーチュラ | YouTubeランキング
https://virtual-youtuber.userlocal.jp/

 

再生回数はにじさんじ総計で10億回くらいらしいです。ちなみに月ノ美兎が2年で6000万回以上。Live主体かと思ったら結構再生されてますよね。
若干やっつけですが1年の再生回数を7億回と見積もると、単価0.3円で2.1億円。
ライバーといちからの取り分の分配が不明ですが、半分だとすると約1億円/年です。

 

投げ銭(主にスーパーチャット)はこちらの方がまとめているのでこちらをベースに考えます。

www.youtube.com

 

2019年だけで5億円以上です。すごい。
2019年最後の4ヶ月の合計が2.5億円程度なので、今後の成長率を無視して、1年7.5億円と仮定しましょう。こちらもライバーの取り分が不明ですが、いちからに35%渡ると計算すると2.6億円です。

 

Youtubeからの収益予想:約3.5億円/年(伸び率を無視)

 

メンバー、ライブ、グッズ、イベント、タイアップはほんとうに読めませんし、一部は下手すると赤字もあり得ると思います。
一番クリティカルなのがpixiv fan boxのような月額課金系です。
例えばこちら月500円をにじさんじファン5万人が購入したら、それだけで3億円に到達します。どうなんでしょうね??

 

いちからのコスト・経費はどう?

こちらも経費は全く読めません。
特にライブが読めないですね。

 

人件費とビルの家賃は、少しわかります。

ビルの賃料:月約1280万円、年間1.5億円
人件費:平均年収360万円としたら、人件費は大体1.7を掛けて600万円、131人で7.8億円程度

ちなみに平均年収は完全に勘です。
平均年齢26歳という点から出しました。

 

まるで信用ならない私のフェルミ推定

人件費+ビル 9.3億円/年
Youtubeからの収益 3.5億円/年

経費が読めません
ライブ、グッズ、イベント、タイアップの収益が読めません

あと、Youtubeからの収益も今後すごいスピードで伸びる可能性があります。
2020年中に2倍になったら、2020年中の収益は1.5倍なので、5.25億円です(ちなみにUUUMの成長率は1.5倍くらい)

 

非常に悪い想定をすれば、単純に「9.3億ー3.5億=5.8億円/年くらい足りない」で当たらずとも遠からずなのではと勝手に思っています。

 

別の視点:いちからの資金調達

2019年8月にいちからは7億円の資金調達しています。

prtimes.jp

 

そう考えると、まあ2020年は何とでもなりそうですよね??

 

ちなみに2019年8月時点で社員数が80人程度ですが、どうやって生きてきたのか、そんなに儲かってたのかとあれこれ想像しましたが、よく調べてみると2018年の4月時点で資本金が3.7億円なので、これがシリーズAなのだと思っています。

参考

prtimes.jp

 

社員数のグラフから、毎月30万円分の人件費が発生すると仮定すれば2019年の8月時点で2.7億円くらい溶けているはずなので、2019年8月に調達おかわりをしたという流れはしっくり来ます。

(あれ、でも何で今の資本金が7億なんでしょう?7億増資ならあわせて10億になるはずでは?? この3.7億ってどっから来たやつなんでしょう)

 

資金調達おかわりは可能か?

まだシリーズBらしいですし行けるんじゃないですかね?(素人並の感想)

2019年夏時点の評価額は52億円。今はもう少し増えているでしょう。

 

参考

initial.inc

 

initial.inc

 

2021年あたりまではとりあえず安心かもしれません。

 

別の視点:未検討事項

VTuber業界・にじさんじそのものの伸び率について、ちょっと調べるのが大変だったので手を付けていません。
数字上は1年で2倍くらいのペースで伸びています。儲けベースでどうかは不明ですし、天井がどこかも不明です。

Vtuberの大人気ライバーたちの伸びはかなり鈍化・停滞していますが、それてもにじさんじ上位勢は月2,3%程度のスピードで伸びています。

 

界隈のポテンシャルも不明です。
単純な話で、例えば30万人から年間5000円を貰えれば15億円なのでワークするように思えます。ニコニコ動画やニコニコチャンネルのようなサブスクリプションを使えば、驚くほどお金が集まるケースもあります。
現状そのようなマネタイズはYoutubeメンバーシップとPixivFanBoxで行われていますが、そこにどれだけの人数が参加しているかはちょっと読めません。

 

いちからは何をしようとしているか

とりあえず言えそうなのはライバー数は更に増えそうだということですね。
どこまで増えるか増やせるかは不明ですが(個人的にはそろそろ多いなと思ってます)

 

あと組織体制を見るとわかりやすいですが、新規サービス開拓と海外事業に17人降っています(開発部門も関わるとしたらそれ以上に)
まだまだ潜在需要を掘り起こそうとしているようです。限界まで挑戦していくスタイルですね。
これは上手く行けば更に飛躍しそうだとワクワクする一方で、新規サービスのヒット率の低さを知っていると「お、大丈夫か?」と杞憂してしまいます。
特に資料の「これから業界がどんどん伸びるよ!」あたりは非常に杞憂ポイントです。KPIが立ってないフェーズでの表現です。

 

おわりに

結局大してわかりませんでしたが、VTuberそのものの規模感は何となくつかめてきました。

ベンチャーに参画するときはこのくらい根掘り葉掘り調べてから関わりたいと思っているのですが、結局外からみてもわからないんですよね。特に成長著しい業界で読むのは難しいです。
ここらへんの力はもう少し研鑽を積みたいです。

 

 

続き

otihateten.hatenablog.com

 

 

追記:2020年6月 いちからが調達おかわり

予想通りでしたね。

 

prtimes.jp

 

f:id:otihateten3510:20200605113959p:plain

 

おかわりして、資本金が26億円になっています。
今回は資本提携という側面が大きいようでしたが、これで現在赤字があったところで全然余裕という状態になりました。
向こう3年か5年くらいは余裕だと思います。
(下手をこいても潰れないという意味で)

それにしても調達合計26億円って、売上規模だと数十億円とかのイメージなんですがどうなんでしょうか。
今後いちからはそこまで規模を拡大していく必要があります(出口戦略)
たぶんにじさんじだけでは無理なのでは?というのが個人的な感想です。

 

まあとりあえず、大半の人にとっての興味は「にじさんじが経営悪化によって悪影響を受けないか」でしょうし、ソレに関してはかなり先まで安心と見ていいと思います。
一旦忘れましょう。

 

追記:2020年9月

社員数が150人になっていました。

コロナでVtuber全体が伸びていますね。

 

追記:2020年9月

募集要項面白いですね。

en-gage.net

 

多くの職種が年俸450万円〜で固定っぽいです。

450万円×約1.5倍(人件費換算)×150人=約10億円(人件費)

家賃が1.5億円なので、合計11.5億円

少なく見積もっても2年は持ちそうですね(2022年)