こんな記事がありまして
お、「モノからコトへ」の話かな、と思ったらそこまで深い話ではありませんでした
なので自分で書いてみます
一応言うとITめっちゃ関係ありますよ
- 若者は”モノを持つこと”に興味がない?
- モノの本質的な価値だけを売る時代
- モノから解き放たれると、価格に自由度が生まれる
- 必要な価値を、必要なときに、必要なだけ使う
- 実は既に多くの場所で利用されている
- これからモノはもっと売れなくなる
- シェアリングエコノミーの様々な軸
- 価値販売は何をやっているか、その強み
- 価値販売にはITシステムが不可欠
- 物販業界の苦悩
- ただし価値販売サービスは非常に難しいので注意
- 若者には物欲がない?モノを買わない?お金がない?
- おまけ:IoTって大丈夫なのかな?
- 追記:
※ちなみに裏は取ってないのでほぼ推論です。適当に読んでください
若者は”モノを持つこと”に興味がない?
(※正直なところ、若者じゃなくて「現代人」と書きたいんですが)
今はモノが売れない時代だと言われています
大抵そういう記事が書かれると「金が無いからだ」「携帯代のせいだ」と言われますが、本当にそれだけでしょうか? 私は他にもあると思っています
物を買う理由はいくつかあると思います
- 必要だから(必要性)
- 欲しいから(物欲)
- 皆持ってるから(コミュニケーションツール)
- 持っている状態に憧れるから(ステータス)
例えば地方の会社員は今でも車を持ってますよね
「持ってて当たり前」くらいに持ってます
つまり必要性に関しては昔も今も変わっていないはずです
(※車以外は必要性が変化しているものもあります)
しかし都内の若者はほとんど車を持っていません
昔は持っていたらしいです
この理由でよく耳にするのが「ナンパに使えないじゃん」ですが、それって要はステータス(持っている状態に価値がある)ですよね
これは予想ですが、現代はモノに溢れた世界になったため、ステータスに価値があまり見いだせなくなり、コスパの悪いものから順に持たなくなっていったのではないかと思っています
もちろん今でも購入や所持そのものが目的になることはありますが、そういったモノに溢れた現代ではそれも食傷気味ですし、購入欲を全部満たそうとすると膨大にお金が掛かることに気づくと思います
そうして「皆が持っている状態」がなくなっていくと、コミュニケーションツールとしても価値が無くなっていき、残るのは物欲と必要性となります
例:車、テレビ
※ちなみにこういう、皆が持ってれば持ってるほどその価値が上がるという状態をネットワーク効果と呼んだります
時代を象徴するような商品は大抵ネットワーク効果が働いているので、それが無くなると一気に売れなくなりますね
ネットワーク効果がより強く発生する「ダイレクトにコミュニケーションツールとなっているモノ(携帯)」は相変わらず「持っていて当たり前」の時代が続いていますね
社会圧として半ば強制力すらあります
モノの本質的な価値だけを売る時代
「所有(購入)に魅力がなくなったのでモノが売れなくなった」という時代になってきたため、今度はモノから所有を引いて売る企業が現れました
(いわゆるユーザー体験です。この用語、ふわっとしてて嫌いですが)
モノから所有(購入)を引いたらどうなるでしょうか?
所有物ではないのでそれを売ることはできなくなります
持っているというステータスもなくなります
カスタマイズ性や利用時間などの自由度も制限されるかもしれません
逆に、管理や維持、破棄の手間は減ります
そしてなにより、モノを利用するという本質的価値は何も変わりません
難しい話ではなく、要はレンタルです
レンタルビデオなんかを想像すると、あれは中の映画を見るだけなら購入と大差無いですよね?
ぶっちゃけてしまえば、所持という行為は「利用するという本質的価値」には大した影響を及ぼしません
※もし若干違和感を覚えるとしたら、何でもかんでもレンタルにしたら面倒だからという点だと思います。実際に何でもかんでもはレンタルにできないのでそれは正しいので、レンタルできるようなものやビデオなどのソフトウェアで想像するとイメージしやすいです
モノから解き放たれると、価格に自由度が生まれる
これもレンタルビデオで考えてもらえばわかると思いますが
1万円のDVDでもレンタルにすることで400円とかいうサイズに切り分けることができるようになります
いわゆるシェアリングエコノミーですね(この単語も本質的ではないので嫌いですが)
レンタルビデオの存在は、1万円のDVDは買いたくないけど400円くらいなら利用したい(本質的価値を享受したい)人たちに受け入れられます
こういう風に
ユーザーが出せる額分だけ出させる仕組みを価格差別といいます
例えばソシャゲやAKB商法なんかも価格差別を使っています
その価値に、100円払いたい人は100円払い、1000円払いたい人は1000円払い、1万円払いたい人は1万円払う状態
全くもって不公平なのですが、この方式が一番売上が上がります(原価が小さくないと使えませんが)
車の場合は時間単位でお金を支払うようにするでしょうから、もう少し公平で受け入れやすいです
つまり、「1つ1つのモノをいちいち高いお金を出して買いたくない」という現代人の価値観に、市場が合わせてきた感じですね
必要な価値を、必要なときに、必要なだけ使う
モノから解き放たれた時のメリットは、価格に限ったことではありません
アマゾンウェブサービスや、クラウドサービスでは既に常識となっていますが、ユーザーの理想を突き詰めると「必要な価値を、必要なときに、必要なだけ使う」になっていきます(そして使った分だけ支払う)
頭を柔らかくして考えなければなりませんが
例えば車だと「車の利用を、必要なときと場所で、乗り終わるまで使う」ですね
Uberのような配車&回収システムさえできれば不可能ではないでしょう
所有を捨てるとそういうこともできるようになります
実は既に多くの場所で利用されている
こういう売り方は既に色々なシーンで行われています(ITサービスの多く)
- 音楽オンデマンドサービス
- 定額音楽視聴サービス
- 電子書籍
- はてなブログ
- サービス利用料
- ソシャゲ
- エアークローゼット(ファッションレンタル)
- 靴のレンタル
- 機械・PCのレンタル(リース全般)
- 定期購読型のWebメディア・雑誌
いずれも所有から解き放たれたからこそ色々な売り方、使い方ができるようになりました
ちなみに月額サービスが多いのは
- 少額に見える
- 安定してお金を落としてほしい
- 解約するの面倒くさい心理で使い続ける
などの事情があります
これからモノはもっと売れなくなる
一旦まとめると
モノを売らないでサービス化することで
- 価格差別の効果を狙える
- 「必要な価値を、必要なときに、必要なだけ(+必要なだけ支払う)」という強みが出せる
ということができます
もしそうなると、物販vsサービスはこういう状態になります
- 物販 :1個1万円 + 維持・管理などの負担
- サービス:1回利用料1000円 + いつでもどこでも
こうなってくると物販は非常に不利なのはわかると思います
例え「合計したらサービスのほうが若干高い」ということになっても不利です
例えば、1ヶ月利用1000円、1年分一度に支払うと1万円、と言われても1ヶ月の方を選択したくなるのは人間の心理だと思います
入り口のハードルが低いですからね
とは言えもちろんこの方法にも限界があります
例えば文房具一個一個をレンタルしたくないですよね。面倒くさいです
使いきりのモノもレンタルできません(食べ物、トイレットペーパーとか)
レンタルが気持ち悪いものもムリです(下着とか)
量産できないもの、スペックが不安定なものも厳しいかもしれません
物販が安価すぎるものもビジネスにしづらいかもしれません
逆にそれ以外はやろうと思えばできてしまいます
そしてそういうサービスが出れば出るほど価格破壊が起き、モノは売れなくなるでしょう
時代を巻き戻すことはできません、だってこちらのほうが便利でしっくりきますから
AWSを利用するエンジニアなら身にしみていると思います
シェアリングエコノミーの様々な軸
「モノ」という意味を拡張して考えると、他にも様々な軸が存在します
少し例を出すと
部屋を貸す AirBnb
駐車場を貸す あきっぱ
印刷機のアイドル時間を貸す ラクスル
空き労働時間を貸す クラウドソーシング
(まだまだあるけど思い出せない)
価値販売は何をやっているか、その強み
※一旦、物販の対義語として価値販売という用語を作ってみました
シェアリングエコノミーには該当しないケースもあるので
彼らがやっていることとしては
- 何かを圧縮したり、効率化したり、切り分けしたり、シェアすることで
- 商品価格の小さい単位を作り、安価にして、ユーザーに提供する
- そこから利便性をどんどん上げていく
というフローなのですが
こうすることで
- 「基本無料」「初月無料」など、入り口の垣根を低く設定できる
- 所有している時以上の利便性を出せる
- 気軽にモノを交換したり、組み合わせたりできる
- 気に入ったら買ってもらうなど、販路を持てる
- 通常の購入より更に高い付加価値を出すこともできる
など非常に強みがでてきます
これらも「モノを売れなくする」一因でしょう
価値販売にはITシステムが不可欠
簡単な話で
- 人件費をかけると価格が高騰する→システム化
- いつでもどこでも→インターフェースが必要
のような事情です
個人的にはこれからもっとそれ系の仕事が増えると睨んでいます
(既に2案件くらい関わってます)
物販業界の苦悩
個人的には、物販業界は価値販売にも攻めて出たほうが良いと考えています
遅かれ早かれ誰かがやるのなら、自分たちでやったほうがいいでしょう
そういう価値観の時代なので仕方ないです
しかし業界レベルでカニバリ(既存事業を食う)ので、特に日本では厳しいだろうなと思っています
なので特に日本では実業家がベンチャーである程度実現した後、物販業界と協業する形がベターなのかもしれません
最悪なのは海外に食われることです
ただし価値販売サービスは非常に難しいので注意
価値販売系のシステムは非常に重たいものになります
イメージとしては「ECサイト+倉庫管理+アプリ」みたいな感じです
まともにやると、軽く見積もっても5000万は掛かってしまいます
また、一つの業界を巻き込まなければならないので営業・経営方面の手腕も必要になります(AirBnbのようなCtoCであれば別)
それに事業がスケールした時に利害関係者の誰かが苦しくなって潰れるような事業設計にしてしまうと、どこかでコケてしまいます
難易度としては相当高いものになるので、流行ってるからと安易に突撃するともれなく死ぬと思ったほうがいいです
若者には物欲がない?モノを買わない?お金がない?
以上のことを考えると、このような主張が古い発想であると気づけると思います
1個だけ必要な商品を10個買いたい人なんてほとんど居ません
同じように、0.1個だけ必要な商品を1個買いたい人もほとんど居ません
若者はその当たり前の行為を行うことで、色々な興味あるものに少しずつお金を払うことができています
まるでスマホのような人間ですね
そしてそういう発想は気づかぬ内に全世代に広がっていくことでしょう
必要なのは市場がそれに合わせていくことです
おまけ:IoTって大丈夫なのかな?
最近IoTも流行ってますが
IoTってぶっちゃけ物販なので、IoTを売るっていうのは時代に逆行してるんですよね
局所的に儲かることはあっても全体としては中々厳しい物になると思うのですがどうなんでしょうか
(個人的にはとりあえずIoTベンチャーには全力で近寄らないようにしてますが)
追記:
アメリカは次の時代に突入してるみたいですね
所有そのものの価値が見直されてるっていうことは、非所有の価値はもう大体分かったってことなんでしょうか? 2周くらい遅れている気がします・・・