IT業界で気づいたことをこっそり書くブログ

何とかする系アプリエンジニア(SE)が、日々気づいたことの中で、役に立ちそうなことを綴っていきます(受託→ベンチャー→フリー→大企業、ベンチャー)

労働集約型産業からの脱却と、失敗(IT受託開発の場合)

労働集約型産業から何故脱却したいと思うか? は二個前の記事をご覧頂きたい

 

otihateten.hatenablog.com

 

簡単に言えばこの二つだ

・給料が上がらない

・人手不足が続く

 

じゃあどうすれば労働集約型産業から脱却できるか

これは業界ごとに変わるだろうから、「IT受託産業において」で考えたい

  

色々書き方を考えたが、アイディアー現実の対で書こうと思う

(読んでる方が居たら是非一緒に考えてもらえたらと思う)

 

アイディア1.顧客からもらう単価を上げればいい

 

「仕事が増えた」「人材不足」なら、価格を上げられるだろう。という主張だ

これはかなり正解に近いが、実際は中々上手くいかない。

上手くいかない理由は相場にある。

一社が幾ら正論で価格を上げようが、他社も上げないと失注しやすい(これは他業界でも同じ)

 

「何言ってるんだ、仕事が溢れてるんだろう?」そう思うかもしれないが、ここでIT受託業界の悪い特徴を2つ挙げたい。

 

a.IT受託産業は、新規参入のハードルが低い

b.IT受託産業は、成果物に対するものさしを作るのが難しく、人単価になりやすい

 

理由を軽く説明すると

aは、・技術進歩が速いため、代わりに習得にも時間がかからない

   ・免許などが要らない(技術進歩が速いため免許制度が作れない)

   ・設備投資がPCくらいで安い

bは、・技術進歩が速いため、正しい尺度を作りにくい

   ・外から見えないので、どの程度品質が高いか見えづらい

   ・専門的すぎてお客さんには分からない

 

以上から相場が動きづらく、値段を下げるとコンペで失注する。

お客さんと実績を蓄積すれば上げられるかもしれないが、そんな関係で「値上げしました」も言いづらいだろう

というわけでこのアイディアは「難しい」

 

アイディア2.仕事の効率を上げればいい

 

20人日の作業を10人日でできれば倍稼げるだろ?

その発想は正しいが上手くいかない。

 

c.システムは流用しづらい(フルスクラッチ

d.IT受託産業は、効率化すれば価格が下がる

e.IT受託産業は、コミュニケーション部分が削れない

f.IT受託産業は、見通しが立てづらい

g.案件が小さい=クライアント規模が小さい=単価が安い

(あと、会社が規模を優先したらどうやっても意味が無い)

 

軽く説明

cは、・技術の進歩が早すぎて、パーツが劣化する(正しい物ではなくなる)

   ・そもそも仕様が複雑、要件が未知のゾーンだと共通化が難しい

dは、・フォーマットを作っている会社はあるが、その分価格が半分以下になっている

   ・もちろん競合他社が居るので価格競争に突入する

efは、・システムの仕様を明らかにする作業が重い

gは説明不要

 

もちろん共通化している会社もあり、これは選択肢の一つだ。

しかし一から全部作るフルスクラッチとはまたやり方が異なってくるため難しいところではある

 

アイディア3.製造など、1つの工程に絞ればいい

 

これも正しい考えだ。

製造と捉え、効率化するならその手段は正しい。

しかしうまくない。

 

h.工程を絞るとクライアントに近い企業から仕事をもらう形になり、ゼネコン化する。

  ゼネコン化すると政治力が必要になり、生かさず殺さず状態になる。

i.そもそも仕様がフラフラするのが常であるため、その揺れを被ることになる

  クライアントが「仕様は簡単に変えられる」と思っていることも影響している。

 

要は下請けになるということだ。

 

アイディア4.対クライアントの工程(上流)に絞ればいい

 

これも正しい考えだ。

皆そう思っている。

皆そう思っているから、大企業がそこに集中している。

つまり、

 

j.大企業が上流肯定を牛耳っているため、競合する

k.系列があるため、下流の会社と提携するのが難しい

 

要はゼネコンなのだ。

ゼネコンをやるかやらないかは選択肢の一つだが、新規参入は難しいと考えたほうがよい。

 

アイディア5.より美味しい案件だけやればいい

 

ナイスアイディア、よくここに辿り着いた!(ここまで来るのに2年はかかるよね?)

その方針を取った会社は多くある。

 

より美味しい案件を、より少数精鋭で行う。

すると利益率はよい。

しかし、会社の成長は止まるので売上は上がらない。

 

経営者は不満だし、会社の知名度は低く、「美味しい案件」が無くなった時に苦しくなる。

美味しくない案件もこなした大きな会社がより大きくなり、IT受託産業全体では解決したことにはならない

 

おしい!

 

アイディア6.美味しい案件があるところに社員が出向く

 

これに辿り着いた人はビジネスの才能がある。

そうだ、どっかの会社に寄生して持ちつ持たれつでいけばいいんだ。

 

現在、そんな会社がひしめいていて、IT技術者の半分はそういう状態だと思っていい。

これにはまた別の問題があるが、この時点でもはやIT受託産業ではなく人材派遣業なのでこれ以上言及しない。

 

アイディア7.若手社員をどんどん入れればいい

 

aは、・技術進歩が速いため、代わりに習得にも時間がかからない

 

ここに目をつけたら出てくる答え

すばらしい。

これはとても理想的な手段だ。

社員構成をピラミッド型にして、若手を安い給料で働かせて、デキる社員の給与だけを上げる。

どこの会社でもやる当たり前のことですね!

 

しかし破綻する。

この方法は年金システム同様、会社が成長し続ける前提に立っているのだ。

若手が育って30歳、40歳になってきたとき、給与を上げるには若手をもっと入れなければならない。

もし仕事が無尽蔵にあるならよいがそんなことはないし、

何より前の記事でも言ったが規模が大きくなればなるほどリスクが高まる

そのため景気が悪化した瞬間にゴッソリ利益が落ちて立ち行かなくなる。

加えて、この方法の危ないのは、その流れを社員が制動できないことだ。行くところまで突っ走る。

 

実際この方法を取っている会社はそこそこある。

規模が大きく、どんどん成長して、しかし利益率が上がっていない会社がそれだ。

 

この方法は5年〜10年くらいは上手くいくが、それ以降はゾンビ化するか潰れるか、別の方法を模索する以外にない。

 

アイディア8.給料上げなきゃいい

 

で、出たーーー!!

これを思いついた人は経営者か人事課に行くべきだ。

  

そう、aと7から導き出される答えはそれだ。

「給料上げなきゃ要らないシニアは出て行く。でも若者だけで回るし大丈夫」

 

これは会社存続のためにはかなり正解に近い

正解に近いが、「給料が安い」「人材不足」をより加速している。

実は多くの会社で起きていることがこれだ。

給料が上がらないので中間層が抜けていく。

よく言う「若者の使い潰し」というやつだ。

 

上手くいくが、

l.規模が大きい案件では、人をコントロールできるシニアクラスが必要

 

これがあるため、大きい案件ができない。

どのくらいかといえば、10人規模が境目になると思う。

5人は回るかもしれないが、15人は厳しい。歴7年以上の人の参加が必要だろう。

そうなってくると7になってしまうので難しい。

 

そして技術力も育たないし育成機能もできないため、常に苦しい状態となる。

案件は誰にでもできるような付加価値のないものになり、会社に魅力も無くなる。

 

結果、上手くやったところで200人〜500人あたりの規模で限界を迎えると思う。

(しかしゾンビのように生き残る会社になるだろう)

 

アイディア9.給料あげないけど、社員が辞めないようにすればいい

 

お前は何を言ってるんだ?

と思うかもしれないがこれが8の進化系だ。

どうするかといえば

 

・信者を作る

・やりがいを与える

・洗脳する

・働きやすさの環境を作る

・逃がさないように時間や情報を縛る

 

こういう方法がある。

これを実践して上手く行ってる会社はそこまで多くないだろうが、上手くいくと500人の壁を突破することもある。

だがもちろん解決はしていない。ゾンビ化しただけだ。

 

アイディア10.付加価値を付けて競争力を上げ、単価を上げる

 

まともだ。

他社には真似できない何かがあればいいのだ。

しかし言ってしまうとそんなものは無い。

あくまで「より有利に」働くとしたら次のようなものはある。

 

・コンサル力(ビジネスとして成功させる)

・デザイン力

・知名度

・根性

・スピード

 

これは至極真っ当で、限りなく正解に近い答えだ。

しかし失敗する。

 

何故かといえば

m.これが出来るなら他の業態になったほうが儲かる

 

自社サービス作ったほうが早いとか、そういう話になる。

もちろん、受託におけるやりがい(色んな案件に関われる。大企業の案件をやれる)+こういう方向性の興味を持った人たちは一定数居て活躍されているのだが

 

n.お客さんに成功してもらうのは自分で成功するのより難しい

 

そして大前提として、

 

o.お客さんが成功しようがお金は入らない

 

会社間にボーナスはないのだ。

この矛盾を会社レベル・社員レベルで飲み込める人はかなり少ない。

結果、耐えられなかった人から別の業態に転職する。

するとどうなるかといえば、そもそも付加価値すら育たない。

 

アイディア11.お客さんの成功にコミットして、対価をもらう

 

順当に行けばこうなるわな。

「お客さん。成功したら半分報酬下さいよ! ボク頑張るんで><」

そういう会社は最近登場している。

しかし、これも中々上手くいかない。

原因はn(お客さんに成功してもらうのは自分で成功するのより難しい)だ。

そしてそれがコンスタントに叩き出せるなら、サービスを共同で作るとか、コンサル会社になったほうが早い。

  

アイディア12.自社サービスを並行でやる

 

「お客さんに成功させるよりなら自分で成功するほうが簡単なんだろ」

じゃあ自社サービスやろうよ!

 

多分エンジニアが言い出す改善案の筆頭じゃないだろうか。

これが上手くいかない。

 

何故か、これは説明するのは難しいが。

p.サービスはそもそも難しい

q.受託産業と構造が違いすぎて、考え方の不一致が起こり文化的に難しい

 

サービスが難しいのはもうそうとしか言えない。

何百とあって何個か成功するような代物だ。

そんなギャンブルに社員の命運を賭けていいのか? 私は皆を説得できる自信がない

そもそもそれができないから受託会社をやってるということを忘れてはいけない

 

qについて、受託と事業は構造が違う。

受託は納品(ローンチ)がゴールであり、受注でお金を得る(ことが保証される)

事業は納品(ローンチ)がスタートであり、エンドユーザーからお金を得て売上が上がる

 

受託では、「タスク、作業=売上」なのだが

しかし事業では、「タスク、作業=人件費=損失」なのだ

 

これを同じ会社、同じ人材でやるとぶっ壊れる(らしい)

しかも納品(ローンチ)にコミットする脳になってるので切り替えができない。

やるとしたら子会社などにするのがよいだろう。

 

それで上手くいってる会社もあるらしいが、難度がかなり高いのは間違いない。

 

アイディア13.成功してるサービスを買う

 

リクルートとかDeNAとかサイバーとか、ああいう企業を参考にするやり方だ。

 

しかし当たり前だがそれ専門の人材とやり方が求められる。

生半可な「ついで」ではできなくて、そんなことをするなら会社を分けた方がいいし、結局IT受託産業の問題は払拭できない。

 

 

 

他、 説明が面倒なアイディア

 

・外国人を安い労働力で → コミュニケーションでロスが発生しすぎてNG

・日本語ができる外国人をやすい労働力で → 単価がそこまで安くないのでNG

(オフショアはほぼ全滅です)

インターンを使う、バイトを使う → そんなに甘くない。作り直すハメになる

・自動化 → できない。仕様というのは固まりきらずに実行されるから

・仕様固めろよ → できない。スケジュールはどんどん短納期になっている。難度が高過ぎる

・主婦とかパートを雇え → できない。専門性が高い

・何か法律で縛れば... → できたらいいですね。大手がさせないと思うが

 

 

 

 

色々書いたが、IT受託産業は別にひどく儲からない職業というわけでもない

そこらへんのPGの単価の相場は月80万。

中級SEの単価は月100万〜120万。

上級SEの単価は企業によっては月160万あたりだ。

間接費、営業費を除くと大抵の会社でお給料は1/3になるから、年収320万〜640万。

 

この受注額は変えずに、営業費を減らす、効率化する、などすれば3割はベースアップできるはず(年収350〜800万)だし、20台若手をもう少し下げれば理想的な昇給カーブも創れる。その他、「構造」レベルで変えずとも会社自体が副業みたいなことをしてもう少し上まで狙える可能性もある(ものづくりはできるわけだから)

 

しかしそれを腰を据えて20年くらいかけてやる会社は中々無い。下手に上場をすれば上の悪いアイディアのいずれかを求められるのもお決まりのルートだ。

 

だが不可能ではない。それをやるかどうかは中の人達次第だ。

 

しかし、ここまで業界の構造に気づいてから「この業界で頑張る」人のモチベーションがどこにあるのか、私には分からない。

人数が多くて分かってない人の方が多いし、それよりなら「別産業構造の大手」とか事業会社のベンチャーに行ったほうが頑張れると思う